なぜ今 AI Agent なのか
LLMアプリケーションの次なる進化
近藤憲児
AI Agent の定義と特徴
AI Agentは、AWS の定義によれば「
環境と対話し、データを収集し、そのデータを使用して自己決定タスクを実行して、事前に決められた目標を達成するためのソフトウェアプログラム
」
現代のAI Agentで特に注目したい特徴は、「
LLMに一度依頼して良い結果を得る
」というアプローチではなく、「
LLMを何度も呼び出して複雑な処理を自動的に実行する
」という点
この特徴により、単発のLLM利用では実現できなかった複雑なタスクの自動化が可能になってきている。
急速に広がる AI Agent
企業の参入
AWS
Microsoft
富士通
CTC
NTTデータ
…
注目のプロダクト
Perplexity
v0
GenSpark
bolt.new
FeloAI
Cursor
…
カオスマップ
awesome-ai-agentsリポジトリのカオスマップが、AI Agent市場の全容を示している。
なぜ Agent か?: 複雑化するタスク
AI Agentの登場の背景の一つに、
LLMに要求されるタスクの複雑化
がある
例えば、カスタマーサポートタスクを考える:
最初は「顧客の質問への回答」という単純なタスク
そこに「過去の類似事例の参照」「製品仕様の確認」「トラブルシューティングの提案」「フォローアップの必要性判断」といった要求が追加
これらを一つのプロンプトで処理しようとすると、対応の正確性と一貫性が保てない
この問題に対する自然な解決策が、タスクを分割し、それぞれを別々のLLMに任せるというアプローチです。これが、AI Agentアーキテクチャの出発点の一つとなる
なぜ Agent か?: LLMの制約
また注目したい理由は
LLM単体の持つ制約
LLMの基本的な制約
現在時刻を知ることができない
URLの中身を直接見ることができない
データベースにアクセスできない
ファイルシステムを操作できない
外部APIを呼び出すことができない
制約の克服
これらの制約を克服するには、LLMに「
道具を使わせる
」必要がある。
RAG(検索拡張生成)
も「
検索という道具を使うAgent
」と捉えることができる。
どうやってAgentを実装するか?:ReAct
1
ReActパターンの特徴
Thought(思考): 次に何をすべきかを考える
Action(行動): 選択した行動を実行する
Observation(観察): 行動の結果を観察する
どうやってAgentを実装するか?:
Agentic Workflow
ReActの考え方を発展させ、より体系的なアプローチとして登場したのが「Agentic Workflow」である。Andrew Ng によって提唱されたこの概念は、「
一度で出力の生成を完結させるのではなく、LLMが反復的にタスクをこなし、出力を改善させる
」という考え方を核としている。
1
Reflection(自己改善)
LLMが自身の出力を評価し改善する。推論の質を段階的に向上させる。
2
Tool Use(ツール活用)
LLMの能力を外部ツールで拡張する。APIやデータベースなど、様々なツールの統合。
3
Planning(計画立案)
複雑なタスクを段階的に分解する。目標達成のための戦略を立案する。
4
Multi-agent collaboration(協調)
専門化された複数のAgentの連携。タスクの分担と統合。
どうやってAgentを実装するか?:
Agent Design Pattern Catalogue
Agentic Workflowの考え方は、さらに発展し、より包括的な「Agent Design Pattern Catalogue」として体系化されている
("Agent Design Pattern Catalogue: A Collection of Architectural Patterns for Foundation Model based Agents")
実装フレームワークの現状
LangChainのLangGraph
現在、AI Agentを実装するための主要なフレームワークとして:
Pythonベースの柔軟なAgentフレームワーク
ReActパターンの実装に特に適している
MicrosoftのAutoGen
複数Agentの協調に特化
エンタープライズでの利用を想定した設計
あと、Swarm
先進事例:
sakana.ai の AI Scientist
これらのパターンを活用した先進的な事例として、sakana.aiのAI Scientistプロジェクトがある。
特徴的な点:
1. 複数のLLMを数十〜百回も呼び出す大規模な連携
2. 科学的営みの自動化という野心的な目標
3. 2040年には機械学習分野でAIが自律的に研究を進められるというビジョン
特に注目すべきは、Reflectionパターンの実践的な活用である。AI Scientistは、実験結果を評価し、その評価に基づいて次のステップを決定するという、自己改善のサイクルを実現している。
AGIへの架け橋として
AI エージェントに注目したい